私はその往還に佇んで、暫く森の方を眺めていましたが、そうして離れて見れば、怪物の様な巨木達が、風のために波打っている有様は、一層物凄く、ますます私に里心を起させるばかりで、さっきの異様の人物は、いつまで待っても出て来る様子がありません。
十分もそうしていたでしょうか、もういよいよ駄目だとあきらめて、あきらめながら、でも何となく残り惜く、この間にもう一度河野の部屋を尋ねて、もし彼がいたら一緒に森の中を探して見ようと、大急ぎで、息せき切って宿の玄関へ駈込み、下駄を脱ぐのももどかしく、廊下を辷り彼の部屋に達するといきなりガラリと襖を開きました。
二十六