が、そうかといって、この好奇的な事件を見捨て、宿を出発するのも残念だものですから、もう少し待てという河野の言葉を当てにして、やっぱり逗留を続けていました。
一方警察の方では、先にもいった、大仕掛けなトランク捜索の仕事を初め、森の中、湖水の岸と洩れなく探し廻ったのですが、結局何の得る所もない様子でした。
そんな無駄な手数をかけさせるまでもなく、ただ一こと、例の時間の錯誤について申出ればよかったのかも知れませんが、河野が「死体の捜索にもなることだから、止めるにも及ぶまい」というので、私もその気になって、警察に対してはあくまで秘密を保っていた訳です。