僕は何が何だかさっぱり訳が分らず、やっと安心したのか部屋の真中へ出て来た長吉を捉えて、兎も角も事の仔細を問いただしました。
すると、長吉がいいますには、丁度その晩も例の旦那の松村なにがしが宴席に来ていて、酔ったまぎれに余りひどい事をいったりしたりするので、長吉は座にいたたまらず、その場をはずして、あてもなく廊下を歩き廻っていたのだそうですが、通りすがりに、トランクの男の部屋の襖があいていて、中に誰もいないのを見ると、長吉はふとある事を思いついたのです。
それは、御承知でしょう、長吉は度々トランクの男に呼ばれていたのですが、何かの機会にあのトランクの中に大金の隠されているのを知ったのです。