すると、長吉がいいますには、丁度その晩も例の旦那の松村なにがしが宴席に来ていて、酔ったまぎれに余りひどい事をいったりしたりするので、長吉は座にいたたまらず、その場をはずして、あてもなく廊下を歩き廻っていたのだそうですが、通りすがりに、トランクの男の部屋の襖があいていて、中に誰もいないのを見ると、長吉はふとある事を思いついたのです。
それは、御承知でしょう、長吉は度々トランクの男に呼ばれていたのですが、何かの機会にあのトランクの中に大金の隠されているのを知ったのです。
手の切れ相なお札の束が幾万円とも知れず入っているのを見たのです。