まぎれやすい林の中では、ちゃんと尾行していたのに、闇とはいえ眼界のひらけた星空の下に出てから、突然彼の姿が消えてしまったというのは、実に異様な感じであった。
その辺は田や畑はなく、一面に荒れ果てた草むらになっていて、道らしい道もなく、夜露にぬれた枯草が気味わるく足にまとい、ともすれば水溜りに踏み込みそうで、歩くのも難儀であったが、神谷は、折角ここまで尾行した怪物を、このまま見捨てて帰るのも残り惜しく、星空にすかして、四方を見廻しながら、向こうの木立ちの中のあかりを目標に、おぼつかなく進んで行った。
ふと気がつくと、二、三間向こうの草むらが、サワサワと鳴っていた。