たちまち相談が一決すると、熊井は長い紹介状をしたためて蘭子に渡し、蘭子は着のみ着のままで、神谷にともなわれて家を出た。
途中たびたび自動車を変えて、蘭子の親友のSというレビュー・ガールのアパートに立ち寄り、そのお友だちを古着屋へ走らせたりして、すっかり変装を終った。
人気女優江川蘭子は忽然としてこの世から消えうせ、そこの鏡台の前に立っているのは、安銘仙の縞物にメリンスの帯をしめ、髪は櫛巻同然の田舎洋髪、薄黒い顔の両頬がポッと赤らんだ上州あたりからぽっと出の、田舎田舎した、しかしなかなか愛くるしい娘さんであった。