文代さんを明智探偵事務所に置いては、いつ「人間豹」の襲撃を受けるかしれたものではない、どこか安全な場所へ避難させてはという意見が多かったけれど、あの魔物にかかっては、江川蘭子の場合でもわかる通り、避難が避難にならないのだ。
それよりも、いっそ主人明智の行く所へついて歩いて、その保護を受けるのが何よりも安心だし、そうすれば探偵のお手伝いもできるのだからと、文代さんのけなげな思い立ちに、明智も賛成して、かくの次第となったわけである。
「吸血鬼」の物語を読まれた読者諸君はご存知であるが、文代さんは前身が女探偵、顔は美しく姿はやさしくとも、決して明智の足手まといとなるような弱い人ではなかった。