さすがに強情我慢な主人の伊志田氏も、妻を失い、子を失い、しかもそれらの殺人の下手人が綾子であったと聞かされ、確証を見せつけられ、その綾子は今どことも知れぬ他国の空に、ジリジリと狭まってくる警察の網の中に、ただ一人身を悶えているのかと思うと、何をどう考えていいのだか、物思う力も尽きはて、ただ茫然と、狂気の一歩手前に踏みとどまっているばかりであった。
七十八歳の祖母は今やまったく狂人であった。
彼女は何を思ったのか、古い白無垢の着物を着て、昼も夜も仏間に坐りつづけていた。
さすがに強情我慢な主人の伊志田氏も、妻を失い、子を失い、しかもそれらの殺人の下手人が綾子であったと聞かされ、確証を見せつけられ、その綾子は今どことも知れぬ他国の空に、ジリジリと狭まってくる警察の網の中に、ただ一人身を悶えているのかと思うと、何をどう考えていいのだか、物思う力も尽きはて、ただ茫然と、狂気の一歩手前に踏みとどまっているばかりであった。
七十八歳の祖母は今やまったく狂人であった。
彼女は何を思ったのか、古い白無垢の着物を着て、昼も夜も仏間に坐りつづけていた。