伊志田氏の磔刑になっていたのは、足先が地上から三尺も離れているほど高い場所なので、何か台がなければ助けおろすこともできなかったが、幸い、すぐそばにキャタツがほうり出してあるのを見つけたので、三人はそれを立てて、いろいろ骨を折って伊志田氏を地上におろし、猿ぐつわもはずしてやった。
伊志田氏は明智に助けられたことは充分意識している様子であったが、立っている気力もなく、グッタリと地上に倒れて、何かわけのわからないことをつぶやきながら、力ない手で、しきりと穴蔵の一方を指さすのであった。
明智は、伊志田氏が何か言おうとしているのかを確かめるために、その指先の示す方角へ、懐中電燈を振り照らした。