うちつづく不幸に心も乱れて、せめては残る家族の無事を念じて、このように一心不乱になっているのであろうが、この部屋の異様に陰気な気違いめいた雰囲気は、ともすれば、その逆に、何かしら無気味な呪いとでもいうようなものを連想せしめた。
明智はその様子を、細目にひらいた襖の隙から、ソッと覗いていたが、老人がさいぜんからの騒ぎに少しも気づいていないらしいことを確かめると、別に言葉をかけるでもなく、そのまま又音のせぬように襖を閉めて、廊下に出た。
そして、廊下の向こうを通りかかった書生を手招きし、その耳に妙なことをささやいたのである。