一室にベッドを並べて横たわっていた伊志田氏と綾子さんは、それから一時間ほどのちには、いくらか元気を取り戻して、少しずつ人々の問いに答えられるようになっていた。
北森課長と明智とは、二人の枕元に腰かけて、からだにさわらぬ程度に、要点だけを質問して行った。
その結果判明したところによると、先ず綾子さんの方は、あの怪青年荒川正太郎変死事件のあった日、すなわち綾子さんが家出をしたと信じられている日以来、例の覆面の怪物のために、あの地下室に押しこめられ、きのうまではただ手足を縛られ、猿ぐつわをはめられて、逃亡の自由を奪われていたばかりであったが、ゆうべ、伊志田氏が同じ穴蔵へ連れ込まれると同時に、あの恐ろしい磔刑の姿で、壁に縛りつけられたというのである。