その結果判明したところによると、先ず綾子さんの方は、あの怪青年荒川正太郎変死事件のあった日、すなわち綾子さんが家出をしたと信じられている日以来、例の覆面の怪物のために、あの地下室に押しこめられ、きのうまではただ手足を縛られ、猿ぐつわをはめられて、逃亡の自由を奪われていたばかりであったが、ゆうべ、伊志田氏が同じ穴蔵へ連れ込まれると同時に、あの恐ろしい磔刑の姿で、壁に縛りつけられたというのである。
一週間の監禁中、ゆうべまでは、一日二度ぐらいずつ、覆面の怪物自身で、パンと飲み物を運んでくれ、その都度、猿ぐつわをはずして手の縄をといてくれたので、飢渇に耐えぬというほどではなかった。
それよりも、一体この先どんな恐ろしい目に遭わされるのかと思うと、食事どころではなく、まったく生きた空はなかったという。