しかし糸子さんは兄さんの所へ来たがってるんですよ」
母は鳴る鉄瓶を卸して、炭取を取り上げた。
隙間なく渋の洩れた劈痕焼に、二筋三筋藍を流す波を描いて、真白な桜を気ままに散らした、薩摩の急須の中には、緑りを細く綯り込んだ宇治の葉が、午の湯に腐やけたまま、ひたひたに重なり合うて冷えている。
しかし糸子さんは兄さんの所へ来たがってるんですよ」
母は鳴る鉄瓶を卸して、炭取を取り上げた。
隙間なく渋の洩れた劈痕焼に、二筋三筋藍を流す波を描いて、真白な桜を気ままに散らした、薩摩の急須の中には、緑りを細く綯り込んだ宇治の葉が、午の湯に腐やけたまま、ひたひたに重なり合うて冷えている。