イヤ、もっとひどいのは、婆さんの乞食を、自動車の中へ拾い上げて、邸宅に連れ戻り、当時まだ在世であった母夫人に、この乞食を家で養ってくれとねだったことさえあった。
美禰子さんの並外れた慈悲心は、同族間ばかりでなく、新聞雑誌のゴシップを通して、広く世間一般の話題にも上り、亡き伯爵夫人は、この気違いめいた令嬢の美徳を、たった一つの苦労にしていた程である。
若し、大河原伯爵家に、怪賊白蝙蝠の乗ずべき隙があったとすれば、この令嬢の奇癖が唯一のものであったかも知れない。
イヤ、もっとひどいのは、婆さんの乞食を、自動車の中へ拾い上げて、邸宅に連れ戻り、当時まだ在世であった母夫人に、この乞食を家で養ってくれとねだったことさえあった。
美禰子さんの並外れた慈悲心は、同族間ばかりでなく、新聞雑誌のゴシップを通して、広く世間一般の話題にも上り、亡き伯爵夫人は、この気違いめいた令嬢の美徳を、たった一つの苦労にしていた程である。
若し、大河原伯爵家に、怪賊白蝙蝠の乗ずべき隙があったとすれば、この令嬢の奇癖が唯一のものであったかも知れない。