そればかりではなく、白蝙蝠の一味は、従来のやり口でも分る通り、(例えば、偽の品川が態々本物の品川の住宅に逃げ込んで、寸分違わぬ二つの顔を並べて、明智小五郎を揶揄した如き)強いて奇想天外な手段を選び、その奇怪なる着想を見せびらかす、所謂犯罪者の虚栄心を、たっぷり所有していたのである。
で、ある日のこと、伯爵令嬢美禰子さんが、本邸の書斎で、物思いに耽りながら(というのは許嫁の俊一氏が当時関西の方へ旅行をしていたからで)うっとり窓の外を眺めていると、広い庭園の森の様な木立ちの奥から、フラフラと現われて来た、奇妙な人物があった。
一見、令嬢と同じ位の年頃の女であったが、明かに乞食以上のものではないらしく、身に纏っているものといったら、着物というよりはボロ、ボロと云うよりは、糸屑といった方がふさわしい代物であった。