彼が若し、真からの悪党であったなら、本物の明智に対して、貴様こそ偽物だと云い張ったであろうが、そうすれば、この全く瓜二つの両人の真偽判別は一寸不可能であったかも知れないのだが、読者も御承知の通り、青木という男はただ極端な猟奇者という丈けで、根はごく小心者だったから、そこまで我慢がし切れず、第一番にその部屋を逃げ出そうとしたのである。
青木が逃げ腰になると、悪党の斧村錠一も一人踏止まる勇気はなく、彼のあとについて、入口へと駈け出した。
「何をボンヤリしているのだ。
彼が若し、真からの悪党であったなら、本物の明智に対して、貴様こそ偽物だと云い張ったであろうが、そうすれば、この全く瓜二つの両人の真偽判別は一寸不可能であったかも知れないのだが、読者も御承知の通り、青木という男はただ極端な猟奇者という丈けで、根はごく小心者だったから、そこまで我慢がし切れず、第一番にその部屋を逃げ出そうとしたのである。
青木が逃げ腰になると、悪党の斧村錠一も一人踏止まる勇気はなく、彼のあとについて、入口へと駈け出した。
「何をボンヤリしているのだ。