そのつどつど、いくつかの背景にふさわしい色シャツを適当に組み合わせて重ね着し、とっさにそれを脱いだり、別の色シャツを上から着こんだりして、動物界の体色の変化と同じ働きをさせるので、その脱いだり着たりする手早さには修練を要したし、シャツとズボンの作り方にもさまざまのくふうが必要であった。
古い建物の壁に住む、おしつぶしたように平べったい灰色の大グモがある。
あの灰色のからだが、やっぱり保護色で、古壁の色と見わけがつかず、あの大グモが目にもとまらぬ早さで壁をはいまわる様子は、なんだかかすみのようで、虫類遁形の術という感じだが、影男速水荘吉の色シャツ応用の隠身術は、あの平グモにそっくりであった。