この大邸宅は、付近で榎御殿と呼ばれていたが、そこの主人公は戦後擡頭した製薬会社の社長で、まだ四十そこそこの毛利幾造という億万長者であった。
毛利氏はこのほど、倍率十二という高価な双眼鏡を買い求めて、二階座敷から、毎日のように、目の下の畑地をながめていた。
その畑地のまんなかに、百坪ほどの地所が、地ならしをされ、新しい板べいで囲まれているのが見えた。
この大邸宅は、付近で榎御殿と呼ばれていたが、そこの主人公は戦後擡頭した製薬会社の社長で、まだ四十そこそこの毛利幾造という億万長者であった。
毛利氏はこのほど、倍率十二という高価な双眼鏡を買い求めて、二階座敷から、毎日のように、目の下の畑地をながめていた。
その畑地のまんなかに、百坪ほどの地所が、地ならしをされ、新しい板べいで囲まれているのが見えた。