前後左右の五つの顔は、赤いくちびるで歌をうたい、十本の手はなよなよとそれに合わせて拍子をとり、十本の足も巧みにステップを踏んでいる。
それは五人の裸女がからだを異様に組み合わせ、ねじり合わせて、一匹のなまめかしい巨獣となったものであった。
洞窟にはいってから二時間あまり、黒いメフィストは時を忘れ、追われている身を忘れ、地上のいっさいの煩いを忘れ、艶樹の森と、地底世界をどよもす音楽と、歌声と、踊り狂う五面十脚の美しい怪獣とに、果てしもなく酔いしれていたが、ふと気がつくと、またしても、ただならぬ奇怪事が起こっていた。