吉田はまた猫のことには「こんなことがあるかもしれないと思ってあんなにも神経質に言ってあるのに」と思って自分が神経質になることによって払った苦痛の犠牲が手応えもなくすっぽかされてしまったことに憤懣を感じないではいられなかった。
しかし今自分は癇癪を立てることによって少しの得もすることはないと思うと、そのわけのわからない猫をあまり身動きもできない状態で立ち去らせることのいかにまた根気のいる仕事であるかを思わざるを得なかった。
猫は吉田の枕のところへやって来るといつものように夜着の襟元から寝床のなかへもぐり込もうとした。