吉田は二年ほど前病気が悪くなって東京の学生生活の延長からその町へ帰って来たのであるが、吉田にとってはそれはほとんどはじめての意識して世間というものを見る生活だった。
しかしそうはいっても吉田は、いつも家の中に引っ込んでいて、そんな知識というものはたいてい家の者の口を通じて吉田にはいって来るのだったが、吉田はさっきの荒物屋の娘の目高のように自分にすすめられた肺病の薬というものを通じて見ても、そういう世間がこの病気と戦っている戦の暗黒さを知ることができるのだった。
最初それはまだ吉田が学生だった頃、この家へ休暇に帰って来たときのことだった。