それはその町に一人の鰥夫の肺病患者があって、その男は病気が重ったままほとんど手当をする人もなく、一軒の荒ら家に捨て置かれてあったのであるが、とうとう最近になって首を縊って死んでしまった。
するとそんな男にでもいろんな借金があって、死んだとなるといろんな債権者がやって来たのであるが、その男に家を貸していた大家がそんな人間を集めてその場でその男の持っていたものを競売にして後仕末をつけることになった。
ところがその品物のなかで最も高い値が出たのはその男が首を縊った縄で、それが一寸二寸というふうにして買い手がついて、大家はその金でその男の簡単な葬式をしてやったばかりでなく自分のところの滞っていた家賃もみな取ってしまったという話であった。