そしてそんな物々しい駄目をおしながらその女の話した薬というのは、素焼の土瓶へ鼠の仔を捕って来て入れてそれを黒焼きにしたもので、それをいくらか宛かごく少ない分量を飲んでいると、「一匹食わんうちに」癒るというのであった。
そしてその「一匹食わんうちに」という表現でまたその婆さんは可怕い顔をして吉田を睨んで見せるのだった。
吉田はそれですっかりその婆さんに牛耳られてしまったのであるが、その女の自分の咳に敏感であったことや、そんな薬のことなどを思い合わせてみると、吉田はその女は付添婦という商売がらではあるが、きっとその女の近い肉親にその病気のものを持っていたのにちがいないということを想像することができるのであった。