そして吉田はその話が次のように変わっていったときなるほどこれだなと思ったのであるが、その女は自分が天理教の教会を持っているということと、そこでいろんな話をしたり祈祷をしたりするからぜひやって来てくれということを、帯の間から名刺とも言えない所番地をゴム版で刷ったみすぼらしい紙片を取り出しながら、吉田にすすめはじめるのだった。
ちょうどそのとき一台の自動車が来かかってブーブーと警笛を鳴らした。
吉田は早くからそれに気がついていて、早くこの女もこの話を切り上げたらいいことにと思って道傍へ寄りかけたのであるが、女は自動車の警笛などは全然注意には入らぬらしく、かえって自分に注意の薄らいで来た吉田の顔色に躍起になりながらその話を続けるので、自動車はとうとう往来で立往生をしなければならなくなってしまった。