吉田は、とにかく女の言うことはみな聞いたあとで温和しく断わってやろうと思っていた自分が、思わず知らず最後まで追いつめられて、急に慌ててカッとなったのに自分ながら半分は可笑しさを感じないではいられなかったが、まだ日の光の新しい午前の往来で、自分がいかにも病人らしい悪い顔貌をして歩いているということを思い知らされたあげく、あんな重苦しい目をしたかと思うと半分は腹立たしくなりながら、病室へ帰ると匇々、
「そんなに悪い顔色かなあ」
と、いきなり鏡を取り出して顔を見ながら寝台の上の母にその顛末を訴えたのだった。