彼女はすっかり暗くなった家を出て、一面識もないような近所の家へ、心当りがあるという訳でもなく、しかし不安の念に閉されて、多少の気不味さをも顧みずに尋ねて行ったり、子供達の話しで原っぱと云われている、近所にあるが彼女がまだ一度も行って見ない荒れた屋敷跡へ出て見たりして、不幸にも彼女の不安に一層確実な根拠を与えて帰って来た時は、その暗い、石油の臭いが微に漂っている家の中は、急に怖ろしく、寒いように彼女に感ぜられた。
彼女はその中にうろうろしながら、思案に暮れた。
追われないままに鼠がその六畳の部屋の食膳の辺まで出て来た。