諸君の大部分はすでに御承知だらうが、そのカジノ・フオリーといふのは、六區の活動寫眞街からやや離れたところに、いつも悲しいやうな愉快なやうな樂隊の音を立ててゐる木馬館と竝んで立つてゐる、水族館の階上にあるのである。
水族館といつても、それはほんの名ばかりで、或ひは私が夜間しかそこに這入らないせゐか、ほとんど水槽のなかに魚の泳いでゐるのをば、私は見たことがないのである。
しかしよく見てゐると、十分に光線の行きとどいてゐない岩のかげに、眠つてゐるのであらうか、その岩と同じやうな色をした身體をぴつたりくつつけてゐる、いくつかの魚等を見つけることが出來た。