そしてそのそれぞれには一々むづかしい名前がつけられてゐるが、私はそれを一つも覺えてゐない。
二階のカジノ・フオリーに出這入りするために、この水族館のなかを通り拔ける人々は多かつたが、わざわざここに立ち止つて魚等を見て行かうとする人は、ほとんど無かつたと言つていい。
埃つぽい木の階段を、下駄の音を氣にしながら上つて行くと、いきなり、人々の頭ごしに(彼等はうしろの方の椅子がたくさん空いてゐるのに、それに腰かけずに、立つたまま、舞臺を見てゐるのである)、音樂が聞え、踊り子たちの踊つてゐるのが見えるのだ。