最初、私がここに通ひ出してゐたときは、私はよく二階のもつとも舞臺に近い席に割り込んでいつて、彼女たちの脚の間から彼女たちの踊るのを見上げるやうにしてゐたが、さうすると、踊り子たちが脚を上げる度毎に舞ひあがる舞臺のひどい埃りを、厭でも吸はなければならなかつたので、それにすつかり閉口して、今度は、三階のもつとも舞臺に近い席から、そしてほとんど踊り子たちの眞上から、彼女らの踊るのを見下すことにしてゐた。
踊り子たちの大部分は十四から二十ぐらゐまでの娘たちだつた。
彼女らは金髮のかつらをつけ、厚化粧をし、そして某新劇團のお古だと言はれる、それほど上等に見える衣裳をつけてはゐたが、彼女らの前身は、恐らく、女工とか、子守娘とか、或ひはそれに近いやうな裏店の娘だつたのに違ひない。