「だつて茉莉が君を愛してゐるぢやないか」僕が云つた。
「あの女は僕のことなんか何とも思つてやしない、僕が死んだつて」彼がさう絶望したやうに云ふのを聞きながら僕は僕の一年前の危機を思ひ起した。
――心の中の手のつけやうのない混亂が一時的に青年を全く無氣力にするのである。
「だつて茉莉が君を愛してゐるぢやないか」僕が云つた。
「あの女は僕のことなんか何とも思つてやしない、僕が死んだつて」彼がさう絶望したやうに云ふのを聞きながら僕は僕の一年前の危機を思ひ起した。
――心の中の手のつけやうのない混亂が一時的に青年を全く無氣力にするのである。