そんな風に私は乘合馬車の出發を待ち佗びながら、しばらくその驛の附近をぶらついてゐたが、そのうちに輕便鐡道の細い線路の横に、何んだか得體の知れない恰好をした菰被りの荷が、それも同じやうな奴が二個竝んで轉がつてゐるのに私は眼を止めた。
其處へ丁度、一人の男が自轉車に乘つてやつて來て、それを重たさうにリア・カアに運び始めた。
するとその時まで私と一緒にそれを物珍らしさうに眺めてゐた、そして矢張り私のやうに乘合の出るのを待つてゐるらしい、一人の湯治客らしい男が居たが、それがつかつかとそちらへ歩み寄つて、自轉車の男と何やら話し出した。