私はどうだつて構はないが、この私のスペイン製の赤いネクタイが文句を言ひかねない、――或る人に貰つたんだが、かういふネクタイは銀座のその店でしか賣つてゐないものと見えて、これを着けてその店の前を通る度にそこの店員が、私にではない、このネクタイにちよつとその目禮をするんだ。
――一體どんな花嫁かはまだよく顏を見ないから知らないけれど、どうせ村の……だが、私は都合よくその花嫁ごと膝をならべずにすんだ。
と言ふのは、その時まで上り口近くに腰をかけてゐた土地の者らしいのが氣を利かして、それへその席を讓つて、私のその隣りへ移つて來たので。