うすぐらいなかに、かすかだが湯の香がする。
翌朝のことだつた。
その溪流に面した湯槽のなかに浸りながら、その硝子戸をすつかり開け放しにして置いたら、向うの山に密生してゐる松柏類が丁度逆光線を受けてくつきりと手に取るやうに見えてはゐたが、――風らしい風もないのに、何處からともなく松の木の葉がたくさん、それも青々としたのが散つて來て、一面に温泉の上に浮ぶ。
うすぐらいなかに、かすかだが湯の香がする。
翌朝のことだつた。
その溪流に面した湯槽のなかに浸りながら、その硝子戸をすつかり開け放しにして置いたら、向うの山に密生してゐる松柏類が丁度逆光線を受けてくつきりと手に取るやうに見えてはゐたが、――風らしい風もないのに、何處からともなく松の木の葉がたくさん、それも青々としたのが散つて來て、一面に温泉の上に浮ぶ。