「繪に描きたいというて、ずゐぶん珍らしい花を方々から取りよせとつたんですよ……」父はそんなことを言ひながら、いま咲いてゐる花のほかにも、まだいろんな、しかしもうちよつと思ひ出せない種類の花がたんとあつたことを浮べながら、どれを見るともなく見入つてゐた。
そしてそれきり何も言はなかつた。
伸子は自分のそばに寄つてきた洋子をそのまま引きよせて、その肩に手をかけながら、彼女にその花を一つ一つ指でさしながら、あの紅いのは何、その下の方の黄いろいのは何、といふ風にきいてゐた。
「繪に描きたいというて、ずゐぶん珍らしい花を方々から取りよせとつたんですよ……」父はそんなことを言ひながら、いま咲いてゐる花のほかにも、まだいろんな、しかしもうちよつと思ひ出せない種類の花がたんとあつたことを浮べながら、どれを見るともなく見入つてゐた。
そしてそれきり何も言はなかつた。
伸子は自分のそばに寄つてきた洋子をそのまま引きよせて、その肩に手をかけながら、彼女にその花を一つ一つ指でさしながら、あの紅いのは何、その下の方の黄いろいのは何、といふ風にきいてゐた。