そんな氣の弱いくせに、どこか我の強い弘がちよつとまだ彼女の手には負へなくおもへ、又、同時にそんな彼に何んともいへず心をひかれた……
すこし大きな包みを片手にかかへ、「マリヤへのお告げ」は車のなかででもちよつと讀まうとおもつてそのまま手にして歸つて行く彼女の前を、かならず驛まで見送りにくる洋子は、いつものやうに小犬のリリイを引つぱつて、――むしろ、ちよこちよこ走りたがる小犬に引つぱられるやうにしながら、ずんずん先きに走つて行くのだつた。
そんな小さな犬なんぞを、このすこし風變りな少女は、ごく子供の時分から好きで好きで、小學校の歸りがけなど、道ばたに棄てられてゐる小犬でもあると、どんな汚ない犬だらうが見さかひもなしに拾つてきては、母や姉の節子に嫌がられて、こんどは半分泣き泣き元の場所にその犬を棄てにやらされたりしたものだつた。