他のところは音もなく過ぎる六月の軟かな微風も、その實の熟れた麥と麥との間を渡るときだけは、ざわざわと一種特別な、どこか秋風めいた音を立てて過ぎた。
「麥秋」――そんな言葉がふいと伸子の口を衝いてでた。
ああ、麥秋といふのはこんな感じをいふんだな、と彼女はおもつた。
他のところは音もなく過ぎる六月の軟かな微風も、その實の熟れた麥と麥との間を渡るときだけは、ざわざわと一種特別な、どこか秋風めいた音を立てて過ぎた。
「麥秋」――そんな言葉がふいと伸子の口を衝いてでた。
ああ、麥秋といふのはこんな感じをいふんだな、と彼女はおもつた。