自分たちのものにはなりさうもない幸福そのもののやうな、他人のコッテエヂを前にしての、そんな空想はしかし二人を愉しませた。
さうやつて毎日搜してゐてもなかなか氣に入つた家の見つからないことが、そんな道草を食ふ愉しみのために、それほど苦にもならなかつた位。
數日後、彼と彼女とがそんな家搜しからまたしても空しく歸る途すがら、集會堂の裏に拔ける林道をまはつてくると、いままで兩側から灌木に挾まれながらSの字を描いてゐたその細い道が一軒のコッテエヂの前にひらけ、丁度その前でぐつとLのやうに曲つて、其處から橡の林の中にはひり込んでゐる。