……」いつのまにか立ち上つた彼女が、それを彼に教へるやうに、その生籬の方へ近づいて行かうとすると、何處かへ見えなくなつてゐたさつきの小鳥らしいものが、ついとまた姿を現はし、こんどは巧みにその生籬をくぐり拔けて、さつと飛び立つた。
その飛び出したあとへ目をやると、なるほど鳥の巣ほどの黒い塊がある。
彼もそれを見ると、急に元氣よく立ち上がつていつたが、そこいらの茂みは相當深いので、鳥の巣が目とすれすれの高さ位にあるのに、さうしてその巣の中で雛鳥らしいものがぴよぴよ啼いてゐるのさへ彼等に聞えてくるのに、それがどうしても覗けないのである。