彼はなんだか自分が殘酷なことをしてゐるやうな氣がして、もう覗くのを止めてステッキを弛めようとすると、彼女がそれに代つて見たさうにしてゐるので、鳥の巣のある枝をひつかけたままそのステッキを彼女に手渡して、自分はそつと其處を立退いた。
「まあ何んて氣味が惡いの……どんなに可愛いいかと思つたら……」彼女も彼のしてゐたやうな恰好をして、爪先き立つて、その巣の中をのぞき込みながら、驚いたやうにさう言つた。
その間、彼は彼等の頭上を枝移りしながら、氣づかはしげに啼きつづけてゐる親鳥の姿を捕まへようとしきりに目で追つてゐたが、なかなかその正體は目には止まらなかつた。