この住み心地よささうなコッテエヂと云ひ、この花ざかりの生籬と云ひ、この小鳥の巣と云ひ……しかし、まあ、何んだつてこんな人の目を誘ひがちな、眞白な花を咲かせてゐる野茨の茂みの、しかも手を屆かせようと思へばわけなく手の屆くやうな枝を選んで、わざわざこの小鳥は巣なんぞをつくつたんだらう。
莫迦だといへば莫迦だが、もしかそいつが何んにも知らないでこの藪に巣をつくつたのだとしたら、もう雛が孵りさうになつたのと殆ど一しよにその藪に一めんに眞白な、好いにほひのする小さな花が咲き出したのに、まあどんなにそいつは面喰つたことだらうと、何んだかそのかうやつて自分達をいま愉しませてくれてゐるやうな失策をやつたその小鳥がいぢらしいやうな氣もした。
――さつきまであんなに氣の狂つたやうに啼き立ててゐたその小鳥の奴は、彼等がその巣の傍を離れると、もうけろりとしたやうに、再びその生籬に戻つてきて、花や葉のなかを何かせはしさうに、いくぶんまだ不安さうに枝移りしてゐる。