さうして「さあ、もう歸らう」と言つた。
彼女も素直に立ち上りながら、しかしまだ夢に半ば浸つてゐるやうな聲で「このままそつとして置いて、毎日見に來ませうね……私達のほかには誰もきつと氣がついてゐないから……」と囁いた。
「どうだか分るもんか……」彼はそんな場合のいつもの癖で、少しぶつきら棒に言つて、それでも道に出てから、もう一度その鳥の巣を通行人の目につき易いかどうか調べて見るかのやうに見透かすやうにしてゐたが、もうさうしてゐても切りがないといつたやうに、ステッキを振りながらさつさと歩き出した。
さうして「さあ、もう歸らう」と言つた。
彼女も素直に立ち上りながら、しかしまだ夢に半ば浸つてゐるやうな聲で「このままそつとして置いて、毎日見に來ませうね……私達のほかには誰もきつと氣がついてゐないから……」と囁いた。
「どうだか分るもんか……」彼はそんな場合のいつもの癖で、少しぶつきら棒に言つて、それでも道に出てから、もう一度その鳥の巣を通行人の目につき易いかどうか調べて見るかのやうに見透かすやうにしてゐたが、もうさうしてゐても切りがないといつたやうに、ステッキを振りながらさつさと歩き出した。