ときどきひよつくり小鳥の巣のことを思ひ出して、この雨にどうなつたらうと二人で氣遣はしさうに話しあひはしたものの、病身の彼には、この雨を冒してまでそれを見にゆくほどの氣にはなれなかつた。
――をかしなことには、この小屋の傍らの大きな樅の木には、始終、いろんな小鳥がやつてくるのに、そんなものは彼には眼中にないらしく、まるであの野茨のなかに巣喰つた見知らない小鳥の他は小鳥なんぞのゐることを忘れてしまつたやうに、やあカケスが來やあがつたな、いつも Jay, Jay と云つてやがつて煩さい野郎だ、――あの莫迦な啄木鳥の奴め、ああやつて樅のてつぺんまで攀ぢ登つてゆく氣なのかしら、といつた冷淡な調子で、彼はそれらの小鳥をちらりと見やるきりだつた。
やつと雨が晴れ間を見せ出したので、足りない世帶道具や食糧品を求めがてら、二人で蝙蝠傘を用心にもつて小屋を下りていつた。