……隨分人が好いわね……」彼女にはさういふ人の好い彼がいかにも焦れつたさうに見える。
しかし實をいふと、彼が何處までも本氣でさういふことを彼女に言つてゐるのか、彼女を揶揄つてゐるのぢやないのか、よく分らないので、その方が本當は心細いのである。
彼は彼で、彼女がさういふ考への中に沈み出したのをいい事にして、あれはやつぱりアカハラだつたらうかと心のうちでとつおいつしながら、片手に二人分の巴旦杏をかかへ、片手にいつものステッキの代りに蝙蝠傘を突きながら、とつととそのコッテエヂの方へ歩いてゐた。
……隨分人が好いわね……」彼女にはさういふ人の好い彼がいかにも焦れつたさうに見える。
しかし實をいふと、彼が何處までも本氣でさういふことを彼女に言つてゐるのか、彼女を揶揄つてゐるのぢやないのか、よく分らないので、その方が本當は心細いのである。
彼は彼で、彼女がさういふ考への中に沈み出したのをいい事にして、あれはやつぱりアカハラだつたらうかと心のうちでとつおいつしながら、片手に二人分の巴旦杏をかかへ、片手にいつものステッキの代りに蝙蝠傘を突きながら、とつととそのコッテエヂの方へ歩いてゐた。