彼は彼で、彼女がさういふ考への中に沈み出したのをいい事にして、あれはやつぱりアカハラだつたらうかと心のうちでとつおいつしながら、片手に二人分の巴旦杏をかかへ、片手にいつものステッキの代りに蝙蝠傘を突きながら、とつととそのコッテエヂの方へ歩いてゐた。
やつと向うにその生籬が見え出したのである。
もう雨のためにあらかた花の散つてしまつてゐるその野茨の茂みの中に、しかし例の小鳥の巣はそのままそつくりしてゐた。
彼は彼で、彼女がさういふ考への中に沈み出したのをいい事にして、あれはやつぱりアカハラだつたらうかと心のうちでとつおいつしながら、片手に二人分の巴旦杏をかかへ、片手にいつものステッキの代りに蝙蝠傘を突きながら、とつととそのコッテエヂの方へ歩いてゐた。
やつと向うにその生籬が見え出したのである。
もう雨のためにあらかた花の散つてしまつてゐるその野茨の茂みの中に、しかし例の小鳥の巣はそのままそつくりしてゐた。