もう雨のためにあらかた花の散つてしまつてゐるその野茨の茂みの中に、しかし例の小鳥の巣はそのままそつくりしてゐた。
あれから五六日經つてゐるのだし、あんなにひどい雨だつたので、どうなつてゐるだらうと思つて、その鳥の巣の懸つてゐる枝ごとこんどは蝙蝠傘の手でたぐりよせて見ると、先づ、聞き覺えのある雛たちの啼き聲がきこえ、それからもうすつかり羽の生え揃つた、嘴ばかり大きい、胸の煉瓦のやうに赤らんだ雛たちが、五六羽まだその巣のなかにどれがどれやら見分けのつかないやうに一塊りになつてるのが認められた。
けふは親鳥は何處へいつてゐるのやら、近くに影も形も見えなかつた。