或る夏、一つのさるすべりの木が私を魅してゐた。
ホテルの二階の窓から、私は最初その木を認めた。
其處からは、丁度物置かなんぞらしい板屋根ごしにその梢だけが少し見えてゐたので、私はそれをホテルの木だとばかり思つて、ときどき何といふこともなしにそれへ空虚な目をやつてゐただけだつた。
或る夏、一つのさるすべりの木が私を魅してゐた。
ホテルの二階の窓から、私は最初その木を認めた。
其處からは、丁度物置かなんぞらしい板屋根ごしにその梢だけが少し見えてゐたので、私はそれをホテルの木だとばかり思つて、ときどき何といふこともなしにそれへ空虚な目をやつてゐただけだつた。