その上、その葉の茂みを透かしながら、籬の向うのホテルの物置小屋ごしに、私の部屋の窓が見えてゐた。
私はこんなところにあらうとは思はなかつたこの美しいさるすべりの木を、それまで物置の隅に立つてゐる何の變つたところもない木だとばかり思つてゐたのだつた。
……私はさるすべりの木がホテルのものとも、前の運送店のものとも、又その筋向うの煙草屋のものともつかず、三方でそれを自分のところのものだと主張してゐる擧句の果、いまだにそんなところに打ち棄てられたままにされてゐるのだと云ふ話を聞いたのは、夏ももう末近くなつてからだつた。