桑やキヤベツの畠の間に二十ばかりの農家が散らばつてゐるきりのその村の中程から、村の人に教へられた通りに、私は北を向いて、無數の落葉松に掩はれた山腹の方へしばらくの間爪先上りに上つて行つた。
二つ三つ薄暗い林を拔けて、すこしそこいらが明るくなつたところに、更らに何處までも續いてゐさうに思へる落葉松林を背負ひながら、一つの丸木造りのコツテエヂが認められた。
が、そのコツテエヂの入口がだんだん近づいてくるにつれて、私はどうも普通の訪問のやうにして行くのは工合が惡いやうに思ひ出しながら、急にその中にはひつて行くのを躊躇しはじめた。