つい熱心にそれに耳を傾けてゐた私は、その時はじめてその女と自分とがいつか知らず識らずの裡に暖爐の方へ背中を丸めるやうにして互に身をよせてゐるのに氣がついた位だつた。
それは半時ばかり前まではそれが熱すぎて何んだか邪魔つけな位に思つてゐたその暖爐の火がやうやう衰へ出した上、いましがたまで室内にどこといふことなしに差し込んでゐた日が急に翳つてしまつたためか、それとも少し嗄れた聲で話しつづけてゐたその女のだんだん低くなり出してゆくやうな言葉を聞き洩らすまいとしてゐたためであらうか?
……それがちよつと分らないほどその女の話に空けたやうになつて聞いてゐた自分を一方では不意に鋭く意識しはじめながら、私は自分の上にさつきからぢつと物問ひたげな目を注ぎ出してゐるその女から顏をそらせて、自分の前の暖爐の中の火がだんだん衰へかけてゐるのを、しかしそれには無頓着さうに見守りながら、