……それには僕なんぞよりも、ずつとずつとえらい奴のものを、まあ、いま言つたやうなリルケの書いたものなんぞを讀んで、お手本にするがいいとも。
さうして僕なんぞの書いてゐるものは、さう、君がいま僕を見ながらさうやつて微笑んでゐる……恐らくさういふ微笑は、君が僕に會ふまで、かうやつて僕に會つて話す場面をいろいろと想像してゐた間は、君には考へもつかなかつたやうなものだらうけれど、……そんな微笑を泛べながらでも讀んでくれるのが一番僕にとつちやあ有難いんだがなあ……」
私も思はずそれに應ずるやうな微笑をし出しながら、いままで見守つてゐた火のますます衰へかけてゐる暖爐から目を移して、窓の外を見ると、その硝子ごしに見える黒い枝にまだ二つ三つしがみついてゐる枯葉がひらひら動きながら、窓枠の中にますます透明な青い色をしだしてゐる空の一部分を汚してゐた。